Dr.BLOG山本院長ドクターブログ

ソケットリフトとサイナスリフト、上顎奥のインプラントを可能にしたテクニック

20年ぐらい前までは、上顎の奥歯にはインプラントができないと言われていました。

その理由は、上顎の上の部分で、鼻の外側には上顎洞(副鼻腔の一つ)という空間があり、そこは、普通は空気が入っています。空気に杭(クイ)を打ち込んでも、その杭はとまりません。杭はちゃんと地面の土の中に打ち込まないと固定しません。

インプラントも同じです。ちゃんと骨の中に打ち込まないと固定しません。上顎洞の空洞の空気の中に打ち込んでも固定せず、豆腐を噛んだだけでも沈み込んで動いてしまうか、インプラント自体が抜けてしまいます。

ある解剖学の研究者によると、日本人の上顎の臼歯部の骨の高さは約5ミリぐらいと言われています。インプラントの標準の長さが10ミリですので、5ミリは骨の中に入り、残りの5ミリは上顎洞の空洞に突き出してしまいます。それで以前は、上顎臼歯部にはインプラントが入れられないと言われていました。

世の中には賢い人がいるもので、上顎洞の内壁はシュナイダー膜(耳鼻科医や医学部出身者には、シュナイダー膜と言っても通じないそうで、歯科医師にだけ通用する歯科用語だそうです)と言う0,5~3ミリぐらいの薄い膜でできていて、その薄い膜を骨から慎重に剥がしてそのシュナイダー膜と骨の間に人工骨などを入れると、そのうち硬くなって自分の骨と置き換わったりするのを利用して、骨の高さを高くする方法を開発しました。具体的には、骨の高さが5ミリの場合は、通常通りに骨に穴を開けるけれども、開けるのは5ミリより1ミリ短い4ミリまで穴をあけます。そしてその4ミリあいた穴に人工骨を入れます。そして、その4ミリの人工骨で満たされたところを、長さが4ミリで断面が円柱の棒で軽くつい打すると、行き場を失った人工骨は、1ミリの残っている骨に、微細ないくつもの骨折(若木骨折)を起こし、その隙間から人工骨はシュナイダー膜まで達して、そのシュナイダー膜は破れることなく持ち上がります。これがインプラント治療におけるソケットリフトと呼ばれるものです。これを利用して何回も、穴に人工骨を入れ、そして、つい打してと、を繰り返すとそのうち10ミリの長さのインプラントが入れられるまでの高さが確保できます。(このソケットリフトという単語は和製英語で、世界の歯科医師に通じません。)

これとは違い、サイナスリフトは上顎洞があるところの外側の骨を口の中から少し削り、シュナイダー膜の手前まで慎重に削ります。そして骨が削れたあとのシュナイダー膜を露出させ、まだ骨とシュナイダー膜が一体化している残っている骨の部分とシュナイダー膜の間に鈍的な器具を入れて、そのシュナイダー膜を骨から膜が破れないように剥がしていきます。そしてそのシュナイダー膜を持ち上げ、そこに人工骨を入れて高さを10ミリ確保して、そこにインプラントを入れます。これがサイナスリフトです。私は以前は、ソケットリフトを中心に行っていました。サイナスリフトも時々行いましたが、ソケットリフトが圧倒的に多かったです。

その理由は、ソケットリフトの方がサイナスリフトより侵襲が小さいからです。つまり、サイナスリフトの方が痛みが出やすく腫れ易いからです。

これはサイナスリフトの欠点でありますが、サイナスリフトの利点はソケットリフトより足りない骨の高さを確保し易いというのがあります。

ただ現在は、サイナスリフトの際に、侵襲を小さくできる超音波の切削器具ピエゾサージェリーを利用できるようになってからは、サイナスリフトの割合が以前より高くなりました。

私のサイナスリフトにするかソケットリフトにするかの基準は、残った骨の高さが5ミリ以上だと確実にソケットリフトにします。

また残った骨の高さが2~5ミリのときにソケットリフトとサイナスリフトのどちらにするかは、上顎洞の形状、埋入インプラントの本数などの他の要素によりどちらかにするか決定します。

残った骨の高さが1ミリのときは、サイナスリフトにします。

このサイナスリフト、ソケットリフトは、富山県内でも行っている歯科医院は多くはないということだそうです。

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