インプラントと痛み
はじめてインプラント治療を受ける患者さんのほぼすべてが、インプラント治療を受ける前は、インプラントを顎の骨に入れるときは痛いんじゃないかと思っておられます。
これは、インプラントを埋入する上でインプラントの形にあったように骨を削らなければならないため、顎の骨を削ることになるというイメージからきています。
歯科業界以外の一般の方にとっては、骨に触れることは痛いことというイメージを持っておられます。
これは、歯科大学の実際の歯科治療に携わったことがない、薬剤師免許を持っておられる教授も、そのようなイメージを持っておられましたので、一般の方は、もっとそうなんだろうなと思います。
歯科治療においては、インプラント治療に限らず、顎の骨を削ったりするということは比較的多くあります。
一番身近なものとしては、抜歯の時です。親知らずを抜歯するときは、親知らずが顎の骨に一部埋まっていることがほとんどで、(時々完全に骨に埋まっています)その時は、骨を削らないと抜けません。
また、親知らず以外でも、前歯、小臼歯、大臼歯でも、炎症が長い間続いていたり、外傷の刺激により、骨と歯が癒着(アンキローシス)している時、歯のまわりの骨を削らないと抜けません。
また、歯周病の治療のひとつ歯周外科処置のときや、歯根分割の時も骨を一部削ることは歯科治療では、よくあります。これらの一般歯科治療の時の骨の削合の時と、インプラントの為の3.5ミリ×10ミリの骨のホール(穴)を削るときと比べて、どちらが痛いかというと、局所麻酔が効けばどちらも痛くないというのが答えです。
ここで、局所麻酔が効けば、という前提をつけたのは、キシロカインなどの局所麻酔をする場合、酸性の環境下では局所麻酔が効きにくいというのがあるからです。
では、どういう時に酸性になるかというと、炎症が起きているときです。
つまり、親知らずのまわりが感染して痛い、歯が痛い、歯茎が腫れていると言った炎症が起きている時は、局所麻酔は効きにくくなります。
ですので、普通の歯科治療においては急性期には抜歯などはせず、炎症がある程度おさまる慢性化するまで外科処置を待ちます。
では、インプラントを埋入する時は?多くの場合、歯が存在せず、炎症がないところにインプラントの為のホール(穴)をあけますので、麻酔が効かないということは、普通はありません。
実際にインプラント治療が始まり、10分ぐらい経つと、患者さんもそれがわかり落ち着かれることがほとんどです。
また、怖いというイメージがどうしてもとれず、不安感が強い方には笑気やドルミカム(ミダゾラム)による鎮静法という選択肢もあります。