Dr.BLOG山本院長ドクターブログ

上顎の奥にインプラント 難しい?

上顎大臼歯部インプラント

 

2000年ぐらいまで、一般のインプラント歯科医師の間では、上顎大臼歯部には、インプラントは普通は入れることができないというのが常識でした。(歯科大学病院では腰の骨を削ってそこから骨を採取して、その骨を使って、上顎大臼歯部にインプラントを入れられるようにするなどの特殊な方法はありましたが)

その理由は、上顎大臼歯部は、上顎のすぐ上には、上顎洞(副鼻腔のひとつ)という空洞があり、インプラントは骨の中に入れて固定され、それでオッセオインテグレーションという骨とインプラントの強い固定力・接着力が生まれますが、空間のなかにインプラントを入れてもインプラントは固定されないからです。空間つまり空気の中にインプラントを埋めても固定されません。

もうひとつの理由は、上顎大臼歯の顎の骨は、とても柔らかくできています。下顎の骨は硬いですが、上顎の骨は、骨密度が低く発泡スチロールのようにスカスカです。スカスカのところにインプラントを入れても、強いチカラを受けるとインプラントが抜けるからです。

それでも、上顎大臼歯部にインプラントの埋入ができるようになって、その成功率が他の部位と変わらないぐらい高いのは、インプラント埋入技術の開発・進歩と歯科用CTの普及、インプラントの表面性状の改良、インプラント治療に使用する骨補填材などのインプラント歯科材料の進歩があります。

日本人の上顎大臼歯部の平均的な骨の高さは上顎洞があるので、4ミリぐらいだと言われています。インプラントの長さは、10ミリぐらいは入れたいですので、6ミリ分、骨の高さが足りません。それを解決するのがソケットリフトというインプラント埋入技術・テクニックです。

例えば、骨の高さが4ミリしかなければ、ギリギリまで3.9ミリまで骨を削り、その状態で、その3.9ミリの高さのインプラント穴に砂状の人工骨を入れます。上顎洞の内側は、つまり上顎洞を構成する骨の表面は、薄い膜(インプラント歯科医師はこれをシュナイダー膜と呼びます。ドイツのシュナイダーが100年以上前にこの膜について報告したことからシュナイダー膜と言われていますが、純粋な歯科用語で医学部出身者には通じないようです)で覆われていますので、穴(インプラントホール)に入れた人工骨をところてんを細くする道具のように口腔側より強く押し出すように圧力を加えると0.1ミリの薄い骨は破れ、それにくっついているシュナイダー膜は破れずに、骨とシュナイダー膜の間に人工骨がたまりシュナイダー膜は持ち上げられ骨プラス人工骨の高さが、10ミリを確保できるようになります。

また、歯科CTの普及もかなり上顎大臼歯部にインプラントを埋入できるようになるのに貢献しました。従来のレントゲン写真では、骨の高さが4ミリしかないように見えても、歯科用CTという立体的な画像を見ると、インプラントを傾斜させたり工夫すると10ミリの高さが確保できる場合があります。平面的なレントゲン写真では4ミリにしか見えなくても立体的にみると角度を少し変えるだけで、実際には10ミリの骨が存在するということです。

また、インプラントの表面の性状も重要です。同じチタンでできていても、インプラントの表面の凹凸をたくさんつけたり、ザラザラに加工することによって骨との接触面積を大きくしたり、引っかかりをよくしてインプラントと骨を強くくっつく(オッセオインテグレーション)ようにしたり、インプラントの表面にハイドロキシアパタイ加工して(ハイドロキシアパタイは骨のメイン構成要素です)骨とインプラントをより強く接着させる技術(オッセオインテグレーションと区別するためバイオインテグレーションと呼ぶインプラント歯科医師もいます)が開発されたりしました。

以上のことから(他にも色々な要素がありますが)上顎大臼歯部のインプラント治療が、普通に行われるようになりました。

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